採用代行会社INREVOが事業停止、売上2.4億円でも破産準備へ|採用支援のプロでも利益を出せない時代の怖さ

採用代行会社INREVOが事業停止、売上2.4億円でも破産準備へ|採用支援のプロでも利益を出せない時代の怖さ
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人材採用代行サービスなどを展開していた福岡市博多区の「INREVO」が2026年8月27日に事業を停止し、破産申請の準備に入ったことが報じられました。

2025年5月期には約2億4600万円の年収入高を計上し、採用代行サービスでは約100社の取引先を確保していたとされています。

一見すると順調に事業を拡大しているようにも見える数字ですが、その裏では価格競争、広告宣伝費、営業費、人件費の増加などによって採算が悪化していたといいます。

※本記事は、RKB毎日放送が帝国データバンク福岡支店の情報をもとに報じた内容を参考に、編集部の見解を加えて構成しています。

採用代行会社INREVOが事業停止、破産申請の準備へ

RKB毎日放送の報道によると、人材採用代行サービスや無人ホテル向けシステムなどを展開していた福岡市博多区の「INREVO」が、2026年8月27日に事業を停止し、破産申請の準備に入ったことが分かりました。

負債総額は約7400万円とみられています。

INREVOは2024年1月に設立された比較的新しい企業で、主力事業として採用代行サービス「ヒトトレ」を展開していました。

新卒採用、中途採用からハイエンド人材までを対象として、採用戦略の立案、求人媒体の運用、面接対応など、企業の採用活動を幅広く支援していたとされています。

採用代行だけではなく、無人ホテル向けのチェックインシステムや客室用タブレット端末「ルームポート」の開発・提供も手がけ、全国の宿泊施設約2500室への導入実績もあったとのことです。

約100社と取引し、年収入高は約2億4600万円

今回のニュースで私が最初に気になったのは、事業規模です。

INREVOはWEB広告や営業代行会社を活用するとともに、代表者の人的ネットワークなどを生かして顧客を拡大。採用代行サービスでは約100社の取引先を獲得し、2025年5月期には年収入高約2億4600万円を計上していました。

設立からそれほど時間が経っていない会社として考えれば、かなり速いスピードで売上を伸ばしていたことになります。

しかし、企業経営において重要なのは、当然ながら「いくら売ったのか」ではなく「最終的にいくら残ったのか」です。

売上2億円、取引先100社という数字だけを見れば「成長企業」に見えます。しかし、利益とキャッシュが残らなければ、売上規模が大きくなればなるほど経営が苦しくなるケースもあります。

これは人材ビジネスでもWEBビジネスでも非常によくある話です。

売上を増やすために広告を増やす。営業担当者を増やす。受注が増えればサービス提供のための人員も必要になる。

すると、売上は増えているのに広告費、営業費、人件費も同時に膨らみ、手元には思ったほど利益が残らないという状態になります。

価格競争と広告費、人件費の増加で採算が悪化

報道によれば、INREVOの人材採用代行事業では、競争激化に伴う価格競争によって利益率が伸び悩んでいたほか、広告宣伝費、営業関連費用、人件費負担の増加などによって、採算面で厳しい状況が続いていたとされています。

さらに、一部取引先との間で債務不履行を巡るトラブルが発生し、複数の訴訟案件を抱えるなど信用不安も顕在化。資金繰りが悪化し、収益改善の見通しが立たなくなったことから事業継続を断念したとみられています。

もちろん、外部から確認できる情報だけで「何が直接的な倒産原因だったのか」を断定することはできません。

債務不履行を巡るトラブルや訴訟の具体的内容も分からない以上、そこについて憶測で論じるべきではないでしょう。

ただし、今回公表されている情報の中には、現在の採用市場や人材ビジネスを考えるうえで非常に気になるポイントがあります。

【コメント】採用を知っている会社でも「採用ビジネス」で利益を出すのが難しい

今回のニュースを見て、一番怖いと感じたのはここです。

採用戦略を立て、求人広告を運用し、企業の採用活動を支援することを専門としている会社でさえ、その事業を安定して利益の出る状態にすることが難しくなっている。

もちろん、今回の倒産を「採用難だけ」が原因だったと言うつもりはありません。

しかし、価格競争、広告費、営業費、人件費という言葉が並んでいるのを見ると、現在の人材ビジネスが抱えている難しさが非常によく表れているように感じます。

採用代行サービスは、設備を大量に仕入れて販売するビジネスではありません。

一見すると粗利益率の高いビジネスに見えます。

ところが、実際にはそう単純ではありません。

顧客を獲得するためには営業が必要です。WEBから獲得するのであれば広告費も必要です。受注すれば、採用戦略、原稿作成、媒体運用、応募者対応、面接調整などを担当する人材が必要になります。

さらに競合企業が増えれば、顧客からは当然「もっと安くできないのか」という話になります。

人件費が上がっているのに販売価格を下げる。

これでは、売上が増えても利益が増えないのは不思議ではありません。

人材紹介や人材派遣も同じです。

「売上を増やせば何とかなる」という発想だけで広告費と営業人員を増やしていると、あるところから売上以上のスピードでコストが増えてしまいます。

私は現在の人材ビジネスでは、売上高以上に「一人の求職者を獲得するためにいくらかかったのか」「一社の顧客を獲得するためにいくらかかったのか」「その顧客から最終的にいくら利益が残ったのか」を見る必要性が以前よりはるかに高くなっていると思います。

Google・Metaへの広告依存は本当にこのままでいいのか

そして、今回のニュースからもう一つ考えなければならないのが、広告費の問題です。

現在、企業がWEB上で顧客や求職者を集めようとすれば、GoogleやMetaなど巨大な海外プラットフォームを無視することはできません。

求人であればIndeedなどの求人プラットフォームへの依存度も高くなります。

これらのサービスそのものを否定するつもりはありません。むしろ、上手に利用すれば非常に強力な集客手段です。

問題は、「広告を出せば集客できる」というモデルだけに経営を依存してしまうことです。

競合企業も同じ広告枠を購入する以上、需要が増えれば広告単価は上がります。

そして企業側は広告費が高くなったからといって、その分を簡単に販売価格へ転嫁できるわけではありません。

広告会社だけが確実に広告費を受け取り、広告主同士は高くなった広告枠を奪い合う。

少し辛口に言えば、広告への依存度が高くなればなるほど、企業は自ら集客しているつもりで、実際にはプラットフォームから「顧客との接点を借り続けている」状態になります。

広告を止めた瞬間に問い合わせが止まる。

求人広告を止めた瞬間に応募者が来なくなる。

この状態を「マーケティングが強い会社」と呼んでいいのか、私は少し疑問があります。

ChatGPTも広告市場へ。マーケティングの海外依存はさらに進む

さらに2026年には、ChatGPTでも広告事業が本格的に始まり、日本でも広告提供が開始されています。

これはマーケティング業界にとって非常に大きな変化だと思います。

これまで検索広告ではGoogle、SNS広告ではMetaという巨大なプラットフォームが存在していました。

そこへ生成AIという新しい情報接点が加わります。

今後、ユーザーが「Googleで検索する」だけではなく、「AIに相談して商品や会社を選ぶ」という行動を増やしていけば、企業はAI上でユーザーに接触するための広告費も考えなければならなくなるでしょう。

つまり企業からすると、

・Googleで見つけてもらうために広告費を払う

・Metaで見つけてもらうために広告費を払う

・求人媒体で求職者に接触するために広告費を払う

・将来的にはAI上で見つけてもらうためにも広告費を払う

という世界になる可能性があります。

これは日本企業にとって、かなり重要な問題ではないでしょうか。

日本企業のビジネスの根幹である「顧客を集める」「求職者を集める」というマーケティング活動が、海外企業のプラットフォームにますます依存していくからです。

プラットフォーム側が悪いという話ではありません。

良いサービスだから利用者が集まり、利用者が集まるから企業も広告を出す。これは当然の市場原理です。

しかし経営する側は、そこで思考を止めてはいけないと思います。

「Google広告はいくら使うか」ではなく、「Google広告を使わなくても問い合わせが来る仕組みをどれだけ持っているか」。

「求人広告をいくら使うか」ではなく、「求人広告だけに頼らず求職者と接点を持てる仕組みがあるか」。

こちらを考える必要があります。

これから重要なのは「広告を使わない」ことではなく「広告だけに依存しない」こと

誤解してほしくないのですが、私は広告を使うべきではないと言っているわけではありません。

採用でも営業でも、新規事業を立ち上げるときには広告は非常に有効です。

問題なのは、広告がマーケティング戦略そのものになってしまうことです。

SEO、専門性の高いコンテンツ、自社サイト、既存顧客からの紹介、SNS、動画、メール、採用データベース、過去応募者との関係、ブランド、口コミ。

こうした自社側に積み上がっていく資産を作りながら広告を使う会社と、毎月広告費を払い続けなければ新規顧客も応募者も来ない会社では、数年後の競争力はかなり違ってくるでしょう。

人材紹介会社や派遣会社なら、特にこの問題は深刻です。

紹介手数料や派遣粗利には限界があります。

そこへ求職者獲得単価だけが上昇していけば、最終的にはビジネスモデルそのものが成立しなくなります。

採用代行会社についても同様です。

採用の専門家だから、自社の経営もうまくいくとは限りません。

営業ができても利益が残らなければ続きません。売上が伸びてもキャッシュが残らなければ続きません。そして採用のプロであっても、人件費・広告費・営業費の上昇から逃れることはできません。

今回のニュースから考えるべきこと

INREVOの事業停止について、外部から分かる情報だけで経営判断の良し悪しを評価することはできません。

まして、債務不履行を巡るトラブルや訴訟の内容が分からない以上、それを倒産原因として単純に結び付けるべきでもありません。

ただ、今回報道された「価格競争」「広告宣伝費」「営業関連費用」「人件費負担」「収益性の悪化」という言葉は、人材採用に関わるビジネスを行っている会社にとって他人事ではないはずです。

売上を増やす前に、「その売上は本当に利益を生んでいるのか」を見る。

応募数を増やす前に、「その応募者一人を獲得するためにいくら払っているのか」を見る。

広告予算を増やす前に、「広告を止めても残るマーケティング資産は何なのか」を考える。

これからの採用・人材ビジネスでは、この視点を持っている会社と持っていない会社の差が、かなり大きくなるのではないかと思います。

売上2億円を超えていても会社は止まります。

取引先が100社あっても会社は止まります。

採用の専門知識を持っていても会社は止まります。

だからこそ、表面的な売上や応募数だけを追うのではなく、利益、顧客獲得コスト、応募者獲得コスト、継続率、そして自社に残るマーケティング資産まで含めて経営を考えることが重要なのではないでしょうか。

今回のニュースは、一社の倒産というだけではなく、採用市場、人材ビジネス、そしてWEBマーケティングがこれから直面する問題を考えるうえで、非常に示唆の多いニュースだと思います。

出典・参考:RKB毎日放送「2億円超の収入高も債務不履行トラブル発生 新卒からハイエンド人材までの採用代行会社が事業停止→破産申請の準備へ【帝国データバンク】」

※企業の事業停止・負債・業績等に関する記述は報道内容をもとにしています。本記事中の市場環境や人材ビジネス、WEBマーケティングに関する考察は編集部による見解です。


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監修者

石井英明

株式会社カスタマ 代表取締役社長

2004年創業。いち早く自社制作の求人サイト運用を始め、医療・介護特化の人材紹介事業を成長させてM&A(事業売却)を成功させる。20年以上の採用実務とWebマーケティングの経験を活かし、現在は求人サイト(自社オウンドメディア)で、企業が直接、求職者を獲得できるよう伴走支援している。現在は、人材紹介・派遣会社など“採用のプロ”の求人サイト制作や運用を支援する「プロを支えるプロ」として活躍。

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